■この映画のご紹介
宇宙のどこかにある刑務所から、毛玉のような全身に鋭い歯を持つ、極めて凶暴な8匹のエイリアン「クリッター(原語ではKrite)」が脱走した。彼らが向かった先は、地球のアメリカ・カンザス州にあるのどかな田舎町。何も知らずに暮らすブラウン一家の農場に宇宙船ごと不時着したクリッターたちは、手当たり次第に人間や家畜を襲い始める。一方、クリッターを追って地球にやってきたのは、どんな姿にも変身できる2人組のバウンティハンター(賞金稼ぎ)。平和だった町は、人間とエイリアンの壮絶な戦いの場と化す。スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』やジョー・ダンテ監督の『グレムリン』の大ヒットに影響を受けて製作された、1980年代を代表するSFホラーコメディの傑作である。
■この映画で使われている会話表現とスラング
hogging the bathroom
トイレ(バスルーム)を独り占めする
hog は名詞では「(食用の)ブタ」を意味するが、動詞として使われると「~を独り占めする」「がめつく取る」という意味になるインフォーマルな表現である。これは、ブタが餌をがつがつと貪欲に食べる様子から連想された用法だ。hogging the bathroom は、誰かがバスルーム(トイレやシャワーを含む空間)に長時間こもって、他の人が使えない状況を指す。家族やルームメイトとの共同生活では頻繁に起こりうるシチュエーションであり、日常会話で非常によく使われるフレーズである。この表現はバスルーム以外にも応用可能で、例えば hog the remote(リモコンを独り占めする)、hog the conversation(会話を独占する)、hog the blankets(毛布を独り占めする)のように、様々な名詞と組み合わせて使うことができる。誰かの自己中心的な行動に不満を述べるときに便利な表現だ。
例文としては、
My sister is always hogging the bathroom in the morning, so I’m always late for school.(姉が朝いつもバスルームを独り占めするから、私は学校に遅刻ばかりしている。)
Stop hogging the popcorn and share some with me!(ポップコーンを独り占めしないで、私にも少し分けてよ!)
He tends to hog the spotlight at every meeting, never letting others speak.(彼は会議のたびに主役の座を独占し、決して他人に話させようとしない傾向がある。)
などが挙げられる。
映画『クリッター』では、ブラウン家の朝の風景でこの表現が登場する。姉のエイプリルがバスルームのドアを叩きながら、中にいる弟のブラッドに向かって Mom! Bradley’s hogging the bathroom.(ママ! ブラッドリーがバスルームを独り占めしてるの)と母親に訴える。この一言で、ブラウン家がごく普通の家庭であり、ティーンエイジャーの姉弟が日常的に些細なことで揉めている様子が生き生きと描かれている。この後、地球外生命体による未曾有の恐怖が一家を襲うことになるが、その前の平和な日常を象徴する、リアルでユーモラスなセリフとなっている。
a real jerk
本当に嫌なやつ、ムカつくやつ
jerk は、他人に対して無神経、自己中心的、失礼な態度をとる人物を指す、非常に一般的なスラングである。特に思いやりに欠ける言動で相手を不快にさせる人を指して使われる。日本語の「嫌なやつ」「ムカつくやつ」「サイテーな人間」といったニュアンスに近い。a real jerk のように real(本当に)を付けることで、その「嫌なやつ」度合いを強調することができる。侮辱的な言葉ではあるが、asshole や shithead といった、より攻撃的で下品なスラングに比べると少しだけマイルドな響きを持つ。しかし、相手に直接言う場合は喧嘩になる可能性が高いので注意が必要だ。友人同士の会話で、第三者の言動について不満を言うような場面でよく使われる。
この表現を使った例文には、
He didn’t even say thank you. What a jerk.(彼、ありがとうさえ言わなかった。なんて嫌なやつなんだ。)
I can’t believe she broke up with you by text message. She’s a real jerk.(彼女がテキストメッセージで君と別れたなんて信じられない。本当にひどい女だ。)
Don’t be a jerk to your little brother.(弟に意地悪するんじゃない。)
などがある。
『クリッター』では、バスルームを独占しているブラッドに対し、しびれを切らした姉のエイプリルがドアの外から BRADLEY, YOU’RE A REAL JERK.(ブラッドリー、あなたって本当に嫌なやつね)と叫ぶ場面で使われる。これはティーンエイジャーの姉弟の間で交わされる典型的な口喧嘩のセリフであり、観客に親近感を抱かせる。このセリフは、後に一家が団結してエイリアンに立ち向かう姿との対比を生み出す効果も持っている。日常的な不満を表現する言葉として、非常にナチュラルに使われている好例だ。
