■この映画のご紹介
1990年に公開され、アカデミー賞7部門を受賞したケビン・コスナー監督・主演の傑作西部劇。南北戦争の英雄でありながら、心に虚しさを抱えるジョン・ダンバー中尉は、消えゆくフロンティア(未開拓の辺境)をその目で見るため、自ら望んで西部の砦への赴任を選ぶ。しかし、彼がたどり着いた砦は廃墟と化し、味方の兵士は誰一人いなかった。広大な大自然の中で孤独な生活を始めたダンバーは、やがて近隣に住むアメリカ先住民のスー族と出会う。最初は警戒し合っていた両者だが、互いの文化や人間性を理解するにつれて、深い友情と尊敬の念で結ばれていく。言葉の壁を越え、狼と踊るように心を通わせるダンバーは、やがて「ダンス・ウィズ・ウルブズ」というスー族の名前を与えられる。壮大な自然描写、文化の衝突と融和、そして一人の男の自己発見の物語が、観る者の心を深く揺さぶる不朽の名作である。
■この映画で使われている会話表現とスラング
run out of
~を使い果たす、~がなくなる
run out of は、食料、お金、時間、忍耐など、蓄えていたものが尽きてしまう状態を表す非常に一般的な句動詞である。スクリプトの中では run outta と表記されているが、これは run out of の発音をそのまま文字にした口語表現であり、日常会話では頻繁にこのように聞こえる。out of を outta と発音することで、より自然でリラックスした会話のリズムが生まれる。
物理的なものがなくなる場合だけでなく、比喩的にも広く使われるのがこの表現の便利な点である。例えば、We’re running out of time.(時間がなくなってきた)や I’m running out of patience.(もう我慢の限界だ)のように、抽象的な概念が尽きていく状況にも使える。ビジネスの場面で We ran out of budget for this project.(このプロジェクトの予算を使い果たしてしまった)と言ったり、日常生活で I ran out of ideas for dinner.(夕食のアイデアが尽きた)と言ったりと、その応用範囲は非常に広い。何かが必要なのに手元にない、という切迫した状況を的確に伝えることができる。
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』では、南北戦争の膠着した戦場で、ペッパー軍曹が士官たちの無関心さをダンバーに愚痴る場面でこの表現が登場する。He’s busy tryin’ to figger out how come the officer’s mess run outta peach ice cream.(少佐は、なんで士官食堂のピーチアイスクリームがなくなったのか解明するのに忙しいのさ)。ここでは、兵士たちが命のやり取りをしている最前線で、上官がアイスクリームが「なくなった」ことのような些細な問題に気を取られているという皮肉が込められている。run outta という口語的な響きが、現場の兵士であるペッパー軍曹の飾り気のない、しかし核心を突いた人物像を際立たせている。この一言は、戦争という極限状況における階級間の断絶と不条理を象徴的に示している。
stand-off
膠着状態、にらみ合い
stand-off は、二つの対立する勢力が互いに譲らず、どちらも決定的な行動を取れないままにらみ合っている状態を指す名詞である。もともとは軍事的な文脈で使われることが多かったが、現在では政治、ビジネス、スポーツ、さらには個人的な対立まで、幅広い状況で使われる。A stand-off between the police and the robbers lasted for hours.(警察と強盗のにらみ合いは何時間も続いた)のように、物理的な対峙を指すこともあれば、The negotiations ended in a stand-off.(交渉は膠着状態に終わった)のように、比喩的な対立を表すこともある。
この言葉の語源は、文字通り「離れて立つ(stand off)」ことから来ており、互いに距離を保ったまま動かない様子を的確に表現している。動詞として stand off と使うこともでき、He stood off from the argument.(彼はその議論から距離を置いた)のように用いられる。名詞の stand-off は、緊張感があり、次の一手がどちらに転ぶか分からない不安定な状況を暗示する言葉として非常に効果的だ。
『ダンス・ウィズ・ウルブズ』では、ペッパー軍曹が南北戦争の戦線の状況をダンバーに説明する際に It’s been a stand-off all damn day.(一日中、にらみ合いが続いてるんだ)と言う。北軍と南軍が互いに石垣の背後に陣取り、散発的な銃撃はあっても大規模な戦闘には至らない、まさに「膠着状態」を指している。このセリフは、戦争の現実的な側面、つまり英雄的な突撃ばかりではなく、退屈で先の見えない消耗戦が延々と続くという側面を浮き彫りにする。この動かない状況が、ダンバーに常軌を逸した行動(敵陣の前を馬で駆け抜ける)を決意させる引き金となっており、物語の重要な転換点を作り出す背景となっている。
