■この映画のご紹介
モダンホラーの帝王スティーヴン・キングの同名小説を、ホラー映画の巨匠ジョン・カーペンターが映画化した1983年の傑作。物語の舞台は1978年、カリフォルニアの典型的な田舎町ロックブリッジ。主人公は、気弱で冴えない高校生アーニー・カニンガム。彼は学校の不良たちからいじめられ、過保護な両親に抑圧される日々を送っていた。そんなある日、彼は打ち捨てられた一台の赤い車、1958年型プリムス・フューリーに一目で心を奪われる。彼はその車を「クリスティーン」と名付け、まるで恋人のように時間と情熱を注ぎ込み、廃車同然だった車体をピカピカに修復していく。しかし、クリスティーンはただのクラシックカーではなかった。邪悪な意志と嫉妬深い魂を宿した、血塗られた過去を持つ車だったのだ。クリスティーンを手に入れてから、アーニーの容姿や性格は別人のように精悍で攻撃的なものへと変貌していく。そして、彼とクリスティーンを侮辱する者たちが、次々と謎の死を遂げていく。親友デニスと恋人リーは、アーニーが車に取り憑かれていることに気づき、彼を救おうと試みるが、クリスティーンの狂気は誰にも止められなかった。
■この映画で使われている会話表現とスラング
Bad to the Bone
骨の髄までワル
Bad to the Bone は直訳すると「骨まで悪い」となり、「根っからのワル」「骨の髄まで悪い」という意味で使われるイディオムである。人の性格や性質が、矯正不可能なほど本質的に悪い、あるいは反抗的であることを強調する表現だ。ジョージ・ソログッド&ザ・デストロイヤーズが1982年にリリースした同名の楽曲によって、このフレーズは世界的に有名になった。この曲の歌詞は、自分が生まれながらのワルであることを自慢げに歌う内容であり、映画やドラマで「ワルなキャラクター」の登場シーンやテーマソングとして頻繁に使用される。日常会話では、本物の悪人に対してだけでなく、冗談めかして反抗的な態度の友人や、手に負えない子供などに対しても使うことができる。He looks friendly, but trust me, he’s bad to the bone.(彼は人当たりが良さそうに見えるけど、信じてくれ、根っからのワルなんだ)のように、人の本性を見抜いていることを示す際に使われることが多い。また、That little kid keeps pulling pranks on everyone. He’s bad to the bone.(あのちびっ子はみんなにイタズラばかりしている。本当にワルガキだ)のように、愛情を込めた皮肉として使われることもある。
映画『クリスティーン』では、この Bad to the Bone が映画全体のテーマを象徴する重要な役割を担っている。オープニングシーン、1957年のデトロイトにあるプリムス社の自動車組立工場で、後に「クリスティーン」と名付けられる一台の赤いプリムス・フューリーが組み立てられる場面で、この曲が大音量で流れる。この演出により、クリスティーンが「生まれた」瞬間から邪悪な存在であったことが観客に強烈に印象付けられる。車がまだ無機質な機械部品の集まりである段階から「骨の髄までワル」であると宣言することで、この物語が単なる機械の暴走ではなく、生まれながらにして邪悪な魂を持つ存在についてのホラーであることを示唆している。この曲が流れる中、作業員が手を潰されたり、車内で謎の死を遂げたりするシーンが描かれ、クリスティーンの呪われた誕生を完璧に演出している。この選曲は、映画史に残る見事なオープニングの一つと言えるだろう。
get laid
セックスする
get laid は「セックスする」「(誰かと)寝る」という意味の非常に口語的で直接的なスラングである。laid は動詞 lay の過去分詞形で、この文脈では「(ベッドに)横たえられる」という受動的な意味合いから転じて、性的な行為を指すようになった。特に、性交の経験を得る、というニュアンスで使われることが多い。フォーマルな場では決して使われず、親しい友人同士の会話や、若者言葉として頻繁に登場する。主に男性が使うことが多いが、女性が使うこともある。He’s always bragging about trying to get laid on the first date.(彼はいつも初デートでセックスしようとすることばかり自慢している)や I just want to go to the party and get laid.(パーティーに行ってヤりたいだけだ)のように、非常に直接的で、時に品のないニュアンスで使われる。恋愛感情よりも肉体的な欲求を優先する文脈で使われがちである。have sex や sleep with someone と同じ意味だが、get laid の方がよりスラング的で、やや乱暴な響きを持つ。
映画『クリスティーン』では、主人公アーニーの親友であるデニスが、いじめられっ子で冴えないアーニーを心配してこの表現を使う。学校へ向かう車の中で、デニスはアーニーに we gotta get you laid this year.(今年はお前に童貞を捨てさせないとな)と語りかける。これは、アーニーがもっと自信を持ち、普通の高校生らしい経験をすることを願うデニスの友情の表れである。しかし、アーニーは You need a girl to get laid.(セックスするには女の子が必要だろ)と悲観的に返す。このやり取りは、アメリカの高校生のリアルな会話を切り取ったものであり、彼らの関心事や人間関係(人気者のデニスと、そうでないアーニーの対比)を浮き彫りにしている。get laid という直接的なスラングを使うことで、二人の間の気兼ねない友情と、デニスがアーニーを子供扱いせず一人の男として見ていることを示している。この時点ではまだ純粋な友情から出た言葉だが、後にアーニーがクリスティーンに魅入られ、人間関係が崩壊していく前触れとして、この何気ない会話が切なく響く。
