■この映画のご紹介
『ホーム・アローン』や『ブレックファスト・クラブ』で知られるジョン・ヒューズ監督が脚本・監督を務めた、心温まるハートフル・コメディ。天性の詐欺師であるビル・ダンサーと、彼の相棒であり、母親に置き去りにされた孤児の少女カーリー・スー。二人は路上で暮らしながら、当面の食事代を稼ぐために軽犯罪を繰り返していた。ある日、いつものように当たり屋稼業をしていた二人は、裕福で美しいが、仕事一筋で心の乾いた女性弁護士グレイ・アリソンと出会う。この出会いが、三人の運命を大きく変えていくことになる。本来なら交わるはずのなかった三人が、次第に心を通わせ、疑似家族のような絆を築いていく様子がユーモラスかつ感動的に描かれる。1991年に公開され、主演のアリサン・ポーターの愛らしい演技と、ジェームズ・ベルーシの人間味あふれるキャラクターが大きな魅力となった作品である。
■この映画で使われている会話表現とスラング
the joint
刑務所
the joint は「刑務所」を意味する非常に一般的なアメリカ英語のスラングである。19世紀頃から使われている言葉で、その語源には諸説ある。一説には、かつて犯罪者たちが集まる場所やアヘン窟などを joint と呼んでいたことから、それが転じて刑務所を指すようになったと言われている。また、石を積み上げて作られた刑務所の壁の「接合部(joint)」から来たという説もある。どのような文脈で使われるかによってニュアンスは変わるが、基本的にはインフォーマルな場面で使われる口語表現である。同じく「刑務所」を意味するスラングには the slammer, the pen (penitentiaryの略), the clink, the big house などがあり、それぞれに微妙なニュアンスの違いや使われる時代背景があるが、the joint は現代でも広く使われている表現の一つである。
日常会話での使い方としては、He spent five years in the joint for robbery.(彼は強盗で5年間服役した)や My uncle just got out of the joint last week.(叔父は先週刑務所から出てきたばかりだ)のように使う。この表現を使うことで、会話は一気にインフォーマルで、少し荒っぽい雰囲気になる。ニュース報道や公式な文書で使われることはなく、あくまで日常会話や映画、小説などのフィクションの世界で耳にする言葉である。
『カーリー・スー』では、物語の序盤、ビルがダイナーで出会った女性ダイナに自分の過去を打ち明ける場面でこの言葉が登場する。ダイナが What’d you do to get yourself in trouble?(何をして捕まったの?)と尋ねると、ビルは少し間を置いて I had a few automobiles in my possession that weren’t rightfully mine.(俺のもんじゃない車をいくつか持ってたんだ)と答える。その後、ダイナに「奥さんでも撃ったのかと思った」と冗談を言われた後、ビルは You think it’s wise to say something like that to someone who just got out of the joint?(刑務所から出たばかりの男にそんなことを言うのが賢いと思うかい?)と返す。ここでの the joint は、ビルがまっとうな社会から外れた場所にいたことを端的に示す言葉として機能している。彼がただのホームレスではなく、前科者であるという重い過去を、このスラング一語で観客に伝えている。
You’re getting sucker kissed.
あなたはカモにされている
sucker kissed は「甘い言葉で騙される」「いいように利用される」という意味のスラング表現である。sucker は「騙されやすい人」「お人好し」「カモ」を意味する俗語で、kiss はここでは文字通りのキスではなく、「甘い言葉」や「口先だけの優しさ」といった比喩的な意味で使われている。つまり、sucker kiss とは、相手を油断させて騙すための甘い罠や口車を指す。したがって、You’re getting sucker kissed. というフレーズは、「あなたはいいように言いくるめられて、カモにされているだけだ」という強い警告や非難のニュアンスを持つ。誰かが親切心からではなく、下心を持って相手に近づいていると疑われる状況で使われることが多い。
この表現は、恋愛詐欺や悪徳商法など、相手の感情や信頼を利用するような状況で特にしっくりくる。例えば、友人が怪しい儲け話に夢中になっているときに、Be careful, it sounds like you’re getting sucker kissed.(気をつけなよ、それじゃまるでカモにされてるみたいだ)と忠告することができる。また、明らかに下心が見え見えの相手に言い寄られている友人に対して、Don’t fall for it. He’s just trying to sucker kiss you into giving him money.(騙されないで。彼はお金をもらうためにあなたを言いくるめようとしているだけよ)といった使い方ができる。
『カーリー・スー』では、グレイの恋人であるウォーカーが、彼女がビルとカーリー・スーに食事を奢ったことを聞き、冷ややかに忠告する場面でこの表現が使われる。グレイが事故の相手である二人が気の毒で食事をご馳走したと話すと、ウォーカーは You’re getting sucker kissed. He’s a bum…(君はカモにされてるんだ。あいつはただの浮浪者だ…)と言い放つ。ウォーカーは、ビルがグレイの同情心や罪悪感につけ込んで利益を得ようとしている詐欺師だと決めつけている。彼のこのセリフは、社会的地位や富を基準に人を見る冷淡な性格と、ビルたちに対する強い偏見を表している。グレイの純粋な同情心と、ウォーカーの猜疑心に満ちた現実的な視点との対比が、このスラングによって鮮明に描き出されている。
