■このドラマのご紹介
家電量販店「バイ・モア」の冴えないオタク店員、チャック・バトウスキー。彼の人生は、スタンフォード大学時代のかつての親友で、今はCIAエージェントとなったブライス・ラーキンから送られてきた一通のEメールによって一変する。そのメールを開いたことで、CIAとNSAのすべての機密情報が、チャックの脳にインストールされてしまったのだ。かくして、チャックは人間スーパーコンピュータ「インターセクト」となり、国家を揺るがす陰謀に巻き込まれていく。彼のお目付け役として派遣されたCIAのクールビューティー、サラ・ウォーカーと、NSAの堅物エージェント、ジョン・ケイシーと共に、チャックの意図せざるスパイ生活が幕を開ける。アクション、コメディ、ロマンス、そしてオタクカルチャーが絶妙に融合した、痛快スパイ・エンターテイメントの傑作である。
■このドラマで使われている会話表現とスラング
What the…
なんだって… / なんだこれは…
What the… は、驚き、混乱、怒り、信じられない気持ちなどを表現する際に使われる、途中で言い切らない形の口語表現である。多くの場合、その後に続くはずの hell や fuck といった卑語を省略することで、感情の昂ぶりをより強調したり、あるいは公の場で不適切な言葉を使うのを避けたりする効果がある。日常会話では非常によく使われ、映画やドラマでも頻出するフレーズだ。相手の言動や目の前で起きている信じがたい状況に対して、言葉を失った様子を表現するのに最適である。例えば、友人がとんでもない髪型で現れたときに、思わず What the… と口走ってしまうような状況が考えられる。また、予想外の請求書を見て What the… this can’t be right.(なんだこれは… こんなの間違ってる)のように使うこともできる。省略せずに言う What the hell is going on?(一体全体何が起こってるんだ?)や What the fuck was that?(今のは一体何だったんだ?)に比べて、ややマイルドな印象を与えるが、文脈によっては驚きの度合いがより強く伝わることもある。
『CHUCK/チャック』の冒頭シーン、DNI(国家情報長官室)のデータ保管庫で、警備員がキーパッドの異常音に気づき振り返る場面でこの表現が使われる。BEEP. The guard turns. GUARD: What the…。彼は異常事態を察知するが、それが何なのか理解する前に、保管庫のドアが目の前で閉まってしまう。この What the… という短いセリフは、警備員の混乱と、事態が彼の理解を超えて急速に進行していることを効果的に示している。これから始まる壮大な事件の幕開けを告げる、緊迫感あふれる一言だ。日常会話でも、何か予期せぬ出来事が起きた際に Oh my god, what the… I left my wallet at home!(なんてことだ、なんだって…家に財布を忘れてきた!)のように、自分の驚きや動揺を表現するのに便利なフレーズである。
killer instinct
殺し屋の本能 / 勝利への執着
killer instinct は、直訳すると「殺し屋の本能」だが、一般的には「勝利への執着心」「非情なまでの競争心」「相手を打ち負かすための冷徹さ」といった意味で使われる。元々はボクシングなどの格闘技で、相手にとどめを刺す非情さを指す言葉だったが、現在ではスポーツ全般、ビジネス、政治など、競争が激しいあらゆる分野で使われる表現となっている。A great salesperson needs to have that killer instinct.(優れた営業マンには、あの殺し屋の本能が必要だ)のように、目標達成のためには手段を選ばないような強い意志や攻撃性を指す。必ずしもネガティブな意味ではなく、むしろ勝者となるために不可欠な資質として肯定的に語られることが多い。例えば、サッカーのストライカーがゴール前で冷静に得点を決める能力や、交渉の場で相手の弱点を見抜いて畳みかける能力などが killer instinct と表現される。
『CHUCK/チャック』では、主人公チャックの親友モーガンが、テレビゲームで遊んでいるチャックに対して You lack the killer instinct.(君には殺し屋の本能が欠けている)と言う。ゲームで敵を倒したにもかかわらず、それに対して喜びを感じていないチャックの人の好さ、優しさを指摘しているのだ。このセリフは、チャックというキャラクターの核心を突いている。彼は優しく、争いを好まない普通の青年であり、スパイの世界に求められる非情さや冷徹さとは無縁の存在だ。この「killer instinct の欠如」が、彼がスパイとして活動していく上での弱点であると同時に、彼の人間的な魅力やコメディ要素を生み出す源泉となっていく。この後、チャックが何度も絶体絶命のピンチを優しさと機転で乗り越えていく姿は、このモーガンの指摘と対比して見ると、より一層面白みが増すだろう。
