Put it on my tab.とは?
バーやレストランを舞台にした映画やドラマを観ていると、主人公が颯爽と飲み物を注文しながら、あるいは席を立つ際にさらっと口にする印象的なフレーズがあります。Put it on my tab.もそのひとつです。日本語に訳せば、「ツケにしておいて」「あとでまとめて払うよ」「私のツケにつけておいて」といったニュアンスになります。
シンプルに構造を分解すると、put it on ~で「それを~につけておく」、my tabで「私のツケ(勘定)」という意味になります。つまり、「今すぐ現金で払わず、後でまとめて精算するリストに加えておいて」というひと言です。日本語の「ツケ」という文化に非常に近い概念で、英語圏、特にバーやパブの文化に深く根ざした表現です。
この記事では、このフレーズの背景にある文化的な習慣から、実際の使われ方、会話例、注意点まで詳しく解説していきます。
tabとはどういう意味か?
このフレーズを理解するうえで欠かせないのが、tabという単語の意味です。日常的な英語でtabにはいくつかの意味がありますが、飲食の文脈では「ツケ帳・掛け払いのリスト・飲み食いの合計金額」を指します。
バーでは常連客が店に「タブ(tab)を開ける(open a tab)」ことで、一杯ごとに支払わず、飲んだ分をバーテンダーがメモしておき、最後にまとめて精算するという仕組みが一般的です。これが「keep a tab」「run a tab」と呼ばれる習慣であり、Put it on my tab.はその文化から生まれた自然な表現です。
語源的には、tabは「短い突起物・タグ・付け札」を意味する古い英語に由来するとされており、そこから「記録するための小さなメモ・リスト」という意味へと派生したと考えられています。
どんな場面で使われるのか?
Put it on my tab.が登場する典型的な場面を具体的に見てみましょう。
- 行きつけのバーで、常連として顔なじみのバーテンダーに飲み物を注文するとき
- 友人の分の飲み物もまとめて自分のツケにつけてもらいたいとき
- 財布を持っていないか、手が離せない状況で今すぐ払えないとき
- 大人数で飲んでいて、幹事役として全員分をまとめて後払いにするとき
- 映画やドラマの中で、余裕や貫録を演出するキャラクターが使う場面
共通しているのは、「今この瞬間に支払いをせず、後でまとめて精算する意思がある」という点です。気前よさや余裕を示す表現としての側面もあり、特にフィクションの世界では主人公の落ち着きやカリスマ性を演出するセリフとして多用されます。
会話例
実際の使われ方を、いくつかの場面別会話例で確認しましょう。
例1:バーで注文するとき
A: What can I get you? B: I'll have a whiskey on the rocks. Put it on my tab. A: ご注文は何にしますか? B: ウィスキーのオンザロックをもらおう。ツケにしておいてくれ。
例2:友人の分もまとめてツケにするとき
A: Should we pay for these now? B: No, no. Put it all on my tab. I'll settle up at the end of the night. A: 今払った方がいいかな? B: いや、全部私のツケにしておいて。夜の終わりにまとめて払うから。
例3:急いでいる場面で
A: That'll be twelve dollars. B: Just put it on my tab, will you? I have to take this call. A: 12ドルになります。 B: ツケにつけといてくれる?電話に出なきゃいけないんだ。
例4:誰かのおごりを申し出るとき
A: I can pay for my own drink. B: Don't worry about it. Put it on my tab — it's on me tonight. A: 自分の分は自分で払えるよ。 B: 気にしないで。私のツケにするよ。今夜は私のおごりだから。
ニュアンスと使い方の注意点
① tabを開けていることが前提である
Put it on my tab.というフレーズは、すでに店にタブ(ツケ帳)が開いていることを前提とした表現です。初めて訪れる店や、タブを開設していない状態でこのフレーズを使うと、「タブを新しく開けますか?(Would you like to open a tab?)」と聞き返されることになります。タブを新しく作る際にはCan I open a tab?やI’d like to start a tab.という表現を使います。
② 似た表現との違いを理解しよう
同じような場面で使われる関連表現も合わせて覚えておきましょう。
- It’s on me.(私のおごりだよ)― 自分が全額負担するという意思を示す、よりカジュアルな表現
- I’ll get this one.(これは私が払うよ)― 今回の分を自分が支払うという表明
- Can you put this on my room?(部屋につけておいてください)― ホテルで使うツケ払いの表現
- Charge it to my account.(私のアカウントに請求してください)― よりフォーマルなビジネス向けの表現
③ 文化的背景を知っておこう
タブ払いの文化は特に欧米のバー・パブ文化に根付いており、常連客と店との信頼関係のうえに成り立っています。日本の「ツケ」文化と非常に近いこの習慣は、現代でもバーやレストランで広く行われています。ただし、どの店でも使えるわけではなく、基本的には顔なじみのある店や、クレジットカードを預けてタブを開けた状態の店でのみ通用する方法です。
④ 発音とリズムに慣れよう
実際の会話ではPut it on my tab.は非常にリズムよく、さらりと発音されます。特に映画やドラマでは台詞として洗練された響きを持つため、ネイティブスピーカーの発音を繰り返し聞いてシャドーイングすることで、自然なリズムが身につきます。
まとめ
Put it on my tab.は、バーやレストランでのツケ払い文化を象徴する、シンプルかつ印象的な英語表現です。構造はシンプルですが、その背景には欧米の飲食文化に深く根ざした習慣があり、使いこなすことで一気にネイティブらしさが増す表現のひとつです。
映画やドラマでこのフレーズが登場する場面に注目しながら、どんな状況で誰が使っているかを意識して聞いてみると、理解がより深まります。ぜひ日常の英語表現として記憶に刻んでおいてください。

こんにちは、ゆぶろぐです。
言葉には、辞書には載っていない「空気」があります。 「どんな表情で?」「どんなトーンで?」 そんな英語の「空気」ごと味わえるよう、フレーズと共に映画のワンシーンを紹介しています。あなたの英語学習が、もっとドラマチックなものになりますように。
本名、吉成雄一郎(よしなりゆういちろう)。株式会社リンガポルタ代表取締役社長。東京電機大学教授、東海大学教授を経て現職。専門は英語教授法。英語学習や英語教育に関する論文、著書、記事多数。
