■この映画のご紹介
南北戦争時代のルイジアナ州の農園を舞台に、奴隷制度の恐怖を生きる女性イーデンの姿から物語は始まる。やがて場面は一変し、現代のアメリカへ。著名な社会学者ヴェロニカ・ヘンリーが誘拐され、その「農園」に連れ込まれていたという衝撃の真実が明かされる。ジェラルド・ブッシュとクリストファー・レンツが共同で監督・脚本を務めた本作は、人種差別の「過去」が決して終わっていないというテーマを、ホラーとスリラーの形式で鋭く描き出した問題作である。ウィリアム・フォークナーの言葉「過去は死んでいない。それは過去ですらない」が冒頭に引用され、作品の核心を示している。
■この映画で使われている会話表現とスラング
accommodate
(婉曲に)要望に応える/(ここでは)殺す
accommodate はもともと「便宜を図る」「要望に応える」「宿泊させる」という意味の動詞である。ホテルや交渉の場でよく使われる丁寧な表現で、We can accommodate your request.(ご要望にお応えできます)や The hotel can accommodate up to 300 guests.(そのホテルは最大300人の宿泊者を収容できます)のように使う。ビジネスシーンでは特に「柔軟に対応する」という意味合いで使われ、非常にフォーマルかつ穏やかな響きを持つ言葉だ。 しかし本作ではこの言葉が极めて不気味な使われ方をしている。『アンテベラム』の中で、ジャスパーが逃亡を試みた奴隷の女性を捕まえた後、Kill me… Just kill me, you bastard!(殺して…殺してちょうだい、この野郎!)と彼女が叫ぶ場面がある。それに対してジャスパーは冷たく、Oh – don’t worry girl. I will accommodate you.(ああ、心配するな。それに応えてやる)と答える。「要望に応える」という礼儀正しい言葉を、「殺してやる」という意味で使うという極めて残忍なユーモアであり、支配者が被支配者に向ける言葉の暴力性を浮き彫りにする表現だ。 日常会話では当然このような使い方はしないが、この映画のシーンを通じて、語彙が文脈によってまったく異なる意味を持つことが強烈に印象づけられる。I’ll try to accommodate your schedule.(スケジュールに合わせるよう努力します)のような使い方が一般的である。言葉の持つ二面性——礼節と残酷さ——を学ぶ上でこれ以上ない教材となっている。
ordained
神によって定められた/宿命とされた
ordain はもともとキリスト教の文脈で「聖職者に叙任する」という意味を持つが、より広い意味では「(神や運命によって)定める・命じる」という意味で使われる。ordained は「神によって定められた」「運命として決まっている」というニュアンスを持ち、宗教的な正当性を主張する際に用いられることが多い。It was ordained by fate.(それは運命によって定められていた)や He was ordained as a priest.(彼は司祭に叙任された)のように使う。 歴史的に見ると、この言葉は奴隷制度の維持を「神の意志」として正当化するために白人の農園主や宗教指導者たちによって実際に使われてきた。本作でもその歴史的な事実が台詞に反映されている。 『アンテベラム』の中で、ヒム(農園主)がイーデンに向かって、it is ordained and you will obey me as your earthly master as intended by our forbearers.(それは神によって定められたことであり、我々の先祖が意図したように、お前は地上の主人たる私に従うのだ)と言う場面がある。宗教的権威を盾に暴力と支配を正当化するこの台詞は、歴史の中で繰り返されてきた抑圧の論理をそのまま体現している。英語学習者にとっては、「宗教的な言葉がどのように政治的・社会的支配に利用されてきたか」を考える上で非常に重要な語彙だ。
