■この作品のご紹介
意識が「スタック」と呼ばれる装置にデジタル化され、肉体である「スリーブ」を交換することで永遠の命が手に入るようになった未来。元エリート兵士タケシ・コヴァッチは、250年間の服役から目覚めさせられる。彼を蘇らせたのは、超富裕層「メト」の一人であるローレンス・バンクロフト。バンクロフトはコヴァッチに、自身の不可解な「殺人事件」の真相を解明するよう依頼する。もし解決できれば、コヴァッチは自由の身となれる。SFの世界観とハードボイルドな探偵物語が融合した、Netflixオリジナルシリーズの傑作である。
■この作品で使われている会話表現とスラング
such a dick
なんて嫌なやつなんだ
dick は男性器を指す卑語だが、スラングとしては「嫌なやつ」「ろくでなし」「自己中心的な人物」を指す言葉として非常に広く使われる。特に男性に対して使われることが多いが、文脈によっては女性の行動を批判する際にも使われうる。such a dick で「なんて嫌なやつなんだ」「本当にろくでなしだ」という強い軽蔑や非難の感情を表現する。asshole や jerk といった類義語があるが、dick は特に相手の行動が意図的に不快であったり、無神経であったりするニュアンスを強調する。
『オルタード・カーボン』では、物語冒頭のモーテルのシャワーシーンで、サラがO.G.コヴァッチに対してこの表現を使う。コヴァッチが、殺して奪ったスタックの持ち主について「Who cares? They’re Triad.(誰が気にする? トライアドだ)」と冷たく言い放ち、さらに「Get the bone flecks out of the drain, will you?(排水溝から骨片を取ってくれ)」と無神経な指示を出したことに対し、サラは呆れて Have you always been such a dick?(昔からそんなに嫌なやつだったの?)と尋ねる。これに対するコヴァッチの「Every sleeve, every time.(どのスリーブでも、いつだってな)」という返答は、彼の皮肉屋で冷徹な性格を端的に示している。このやり取りは、二人の関係性が純粋なビジネスパートナーであり、感情的な繋がりが希薄であることを視聴者に伝える重要な場面だ。
日常会話でも、友人や同僚の自己中心的な行動に呆れたときに使うことができる。例えば、友人がレストランで店員に横柄な態度を取った場合、後で Why were you being such a dick to the waiter?(どうしてあのウェイターにあんなに嫌な態度を取ってたんだ?)と注意することができる。また、約束を平気で破る友人に対して、He cancelled on me again. He’s such a dick.(またドタキャンされたよ。あいつは本当に嫌なやつだ)のように愚痴をこぼす際にも使える。非常に口語的で強い言葉なので、親しい間柄で使うのが一般的であり、フォーマルな場では避けるべき表現である。
let off steam
ストレスを発散する/うっぷんを晴らす
let off steam は「(溜まった)蒸気を放出する」という直訳から転じて、「溜まったストレスや怒り、不満などを発散させる」という意味で使われる非常に一般的なイディオムである。蒸気機関車が安全弁から余分な蒸気を噴出させて圧力を下げる様子が語源とされており、感情的なエネルギーを解放して精神的なバランスを取り戻す行為を指す。スポーツや趣味、友人との会話、あるいは物理的な活動など、様々な方法でのストレス発散に使うことができる。類義語としては blow off steam があり、ほぼ同じ意味で使われる。
『オルタード・カーボン』では、O.G.コヴァッチとサラがシャワーで血を洗い流した後の性交シーンの描写でこの表現が使われている。ナレーションは二人の行為を There’s no tenderness between them — like watching buddies wrestling to let off steam.(二人の間に優しさはない。まるで仲間同士がストレスを発散するためにレスリングをしているようだ)と説明している。ここでの let off steam は、彼らの性交が愛情や情熱からくるものではなく、戦闘で高ぶった神経を鎮め、緊張を解放するための純粋に物理的な行為であることを示唆している。感情的な繋がりを欠いた、刹那的で機能的な関係性を強調する効果的な表現となっている。
日常会話では、仕事や勉強で疲れた際に気分転換を提案する場面で頻繁に使われる。例えば、仕事でストレスが溜まっている同僚に対して、Let’s go for a drink after work to let off some steam.(仕事の後に飲みに行ってストレス発散しよう)と誘うことができる。また、運動がストレス解消法であることを説明する際に、I go for a run every morning to let off steam.(毎朝ランニングに行ってストレスを発散しているんだ)のように使うこともできる。試験勉強に追われる学生が We need to take a break and let off some steam.(少し休憩して息抜きする必要があるね)と言うなど、状況を問わず幅広く応用できる便利な表現である。
